外国人材を採用したばかりの企業からとある相談を受けていろいろと調べてまとめたので記事にしました。相談の内容は、同じミスを繰り返す外国人材に、どのように対応すればいいのか、どう指導していけばいいかという相談です。どんな同じミスを繰り返しているのかというと、
仕事で使う道具や工具を乱雑に扱う
日本の職人さんは仕事道具を丁寧に扱います。腕の良い職人さんほど仕事道具の手入れには余念がありません。
職人の命とも言える仕事道具を外国人材が借りて乱雑にあつかい道具に傷をつけたり汚してしまって困っていると相談がありました。
再三再四にわたる注意を外国人材にするものの一向に改善の兆しが見られないため、
企業の担当者が外国人材に道具の大切さに気づいてもらうために損害の一部(ダメにしてしまった道具や工具)を請求するのはどうかと相談を受けました。
管轄の労働基準監督署に確認をしたので以下にまとめました。
給料から損害額を天引きするのはNG
そもそも大前提として外国人材も日本人材も労働基準法のもとでは平等に労働者として同じ法律が適用されます。
労働基準法第24条、「賃金全額払の原則」があります。原則として、給料は全額を支払わなければなりません。つまり損害額を給料から天引きすることはできません。なので給料を全額支払ってから、弁償を求めていく流れになります。
雇用契約や就業規則に罰金を盛り込むのもNG
「途中でやめたら、違約金を払え」「会社に損害を与えたら○○円払え」といった雇用契約や就業規則は違法です。労働基準法第16条、「賠償予定の禁止」があります。従業員の労働契約の不履行を防止するため、不履行の場合の違約金を定めたり損害賠償を予定する契約を結んではならないと定められています。
罰金が前提の雇用契約はそもそも成立しません。違法です。効力がありません。
給料から天引きはダメ、雇用契約や就業規則に罰金もダメ
ただし損害賠償の請求はOK。労働者の責任により発生した損害について賠償を請求することは禁止されていません。しかし、実際に発生した損害の全額を請求することは過去の判例から見ても難しいようです。
過去の実際にあった判例では、深夜作業中の従業員が居眠りをして会社の機械を破損させたケースがあります。
従業員が勤務中に居眠りをして機械を壊しましたが裁判所が従業員に対して命じたのは修理費用の 4分の1の弁償義務です。従業員側に重大な過失や犯罪行為が無ければ認められているケースでも4分の1
労働者側には責任制限がある
事業主が従業員に対して金銭賠償を求めることは、資力の乏しい労働者にとって過酷すぎる背景から、裁判例は信義則に基づく責任制限法理を採用しています。
事業活動によるリスクはそれにより利益を得ている事業主が負担すべきという報償責任の要請)を考慮し、会社の損害賠償及び求償権の行使を一定の割合で制限しようとするものです。
つまり事業主は利益を取るのだから業務上のリスクも取らなければなりません。
実際に労働基準監督署に問い合わせたら損害額を給料から天引きすること、雇用契約書や就業規則に罰金を盛り込むことは違法であると説明してくれました。そして過去の判例から4分の1の損害額を従業員側が命じられたケースを引き合いに出しながら、実際の結論は裁判所に委ねないと出せないと回答でした。
まずは企業と外国人材が面談をして、当該事実について話し合いを重ねて、破損した物品の一覧を作成し始末書を作成して記録に残す。さらに損害の賠償を同意した場合には合意書を作成しておくことと助言をもらいました。
今回は同じミスを繰り返す外国人材に損害の費用を請求することができるのかについて記事にしました。結論としては損害の請求をすることはできるけど損害の全額はまず無理であり、やはり話し合いの上で解決をしていくことになります。ポイントは合意書や始末書など合意に至りサインをしてもらう際に、必ず母国語で併記された書面を使うと後々のトラブルを未然に防ぐことができます。