外国人材を採用して起きるトラブル
日本で働いている外国人労働者は年々増加しています。
日本に住む日本人の人口が2008年に1億2808万人をピークに減少に転じ、直近の総務省が発表する人口推計では1億2536万人(2021年7月現在)となっており約270万人の人口が減少しています。https://www.stat.go.jp/data/jinsui/new.html
日本社会を支える日本の労働力人口も減少を続けていますが、逆行して外国人労働者は増加を続けています。厚生労働省の発表する外国人雇用状況では172万4千人の外国人労働者が日本で働いています。2008年には48万6千人だった外国人労働者数が、122万人以上も増加しています。(2020年10月時点での数値)https://www.mhlw.go.jp/stf/newpage_16279.html
まだまだ日本では人口減少のめどが立たないので日本社会を支える労働力として外国人労働者数は増加していく見込みが極めて高いです。日常的に目にするコンビニエンスストアの店員や建設現場の外国人労働者や製造業や食品加工業などの工場で働く外国人材はまだまだ増加傾向にあります。
そんな増加傾向にある日本で働いている外国人労働者が、いままで育ってきた自国を離れて異国の地、日本で働く中で様々な労働相談が行政に集まっています。今回の記事では、日本で働いている外国人労働者の実際の相談内容と雇用している側の日本企業の現場で働いている日本人社員からのヒアリング調査結果を基に、労働者と企業側の雇用のミスマッチを解消する糸口をまとめてみました。外国人材を採用する企業と日本企業で働いている外国人材のミスマッチを解消する役に少しでも立てればと思います。
外国人材雇用のミスマッチ
外国人技能実習機構が公表している母国語相談件数の内容から見ていきます。
今回の調査結果は、外国人技能実習機構が公表している https://www.otit.go.jp/files/user/docs/201002-4-1.pdf
母国語相談件数の内容から見ていきます。
直近で最も新しいデータでは2019年に実施された母国語相談件数があります。
全体で7452件の相談が寄せられています。最も多い相談件数が管理に関することで1673件になります。全体の約22パーセント。5件に1件以上の相談が管理に関することになります。
管理に関すること?と聞くと何のことだろうと疑問がわいてきたので外国人技能実習機構に電話して内容を確認しました。
管理に関すること、とは監理団体と技能実習生のコミニューケーションであったり、実習実施者と技能実習生のコミュニケーションであったりするとのことです。その他にも宿舎に関する管理のことも含んでいて、とても広い意味での管理についてという項目だと外国人技能実習機構の担当者の方から回答をいただきました。
管理に関すること
それ以外に実際の現場の外国人技能実習生から寄せられる声から推測すると
外国人材側から管理について母国語で相談をするという背景から考えると、技能実習生側からすると母国で契約をした送出し機関に求める管理の相談もあるのではないかと考えます。
技能実習生に関わるのは、母国から日本で働かせてくれる企業を紹介してくれる送出し機関こそ最初の入口になります。その送出し機関と協定を結んでいる監理団体(協同組合など)、そしてその監理団体の組合員である実習実施者(受け入れ企業)の3社があります。
外国人材からすると技能実習生としての入口は、どこまでも母国の送出し機関になります。この最初の入口で、しっかりとした雇用条件や労働環境の事前説明があれば、その後の日本での管理について相談が技能実習生としての人生を決めます。受け入れる会社側からしても最初の入社説明を事前にしっかりするかしないかは送出し機関にかかっています。
自社の雇用条件、労働環境、業界による特殊な事情や、求職者にもとめる資質など最初の段階で求職者(日本にやって来てくれる技能実習生)に適正に伝える必要があります。
次に多いのが「賃金・時間外労働等の労働条件に関すること」
1320件になります。全体の約17パーセント
賃金については、残業代の未払いや休日割り増しや深夜割り増しの残業代の計算、などが該当すると考えられます。
実際に弊社が外国人労働者の方(外国人技能実習生を含む)から相談を受ける賃金の内容では、
・残業代の計算方法について
・昇給について
・有給について
この3件が代表的な相談内容になります。
まず残業代の計算方法について、この部分は外国人労働者が日本の残業代の計算方法の知識がないことが原因にあげられます。
日本の給与計算は複雑です。残業代で言えば、週40時間の労働を超えた部分の1.25の割り増しや、所定労働時間内の残業についての外国人材との解釈の違いなどがあげられます。その他にも細かいことで言えば1分単位の残業代を計算しないという相談から、事業所や会社によっては10分単位で実際に働いた時間を切り下げてしまう例などもあります。
最近では行政の悪質な事業所に対する取り締まりも厳格化されてきているので、ひとむかし前にあった残業代の未払いや最低賃金を割った賃金の支払いなどは滅多に見られません。
次に多いのが昇給について、外国人労働者、外国人技能実習生、特定技能外国人材など、すべての外国人材に見られる傾向として、勤続年数に合わせた昇給や、後輩が入ってきたことにより後輩に指導をしていることによる昇給の交渉、技能実習から特定技能にステップアップすることによる昇給希望を伝えてくる外国人材はとても多いです。
企業内で人事評価の基準や昇給の基準が明確になっている企業では昇給についてもめることは少ないです。人事評価の基準があいまいだったりすると適正な賃金の提示ができないので外国人材を納得させるのが大変です。
簡単に始められる部分としては皆勤手当てなどをつくって評価をしていくと良いかと思います。
昇給については弊社が関わっている企業では、おおむね前向きに昇給に応じています。昇給に応じない事例としては昇給を訴えている外国人材自体の能力不足、勤務態度による事例があります。
有給について、有給を取るタイミングについて企業側からも外国人労働者側からも相談をよく受けます。企業としては繁忙期をなるべく避けて有給を取得して欲しい、外国人材側からは有給を取りたいときに取りたい。という両者の希望のくいちがいによる相談が事例としてあります。法的には労働者側が有給休暇の取得申請をする際には、理由や目的は言わなくても問題は無いのですが、企業側も事業の正常な運営が妨げられる場合には、労働者側に有給休暇の取得時期を変更してもらえるよう打診することはできます。法律にそっていけば労働者側の主張が強いように見えますが、ルール通りに個人の権利を優先して企業全体のバランスを考えずに有給休暇を運用していると企業内の人間関係は悪化してしまうので、どこまでも企業側も外国人労働者側も合意を取り付けることに苦労するときがあります。
3番目に多いのが、実習先変更に関すること
870件の相談が寄せられており、全体の約11パーセント
実習先とは外国人技能実習生が働いている会社になります。要は転職を希望している相談になります。
転職を希望する相談からは具体的な問題の原因がイメージできませんが、弊社で実際に受ける転職の相談を事例にあげてみたいと思います。
・人間関係
・賃金
・労働環境の改善
・同居人とのトラブル 人間関係の不和
・暴力行為
・住環境の改善
etc
転職を希望する相談を受ける中で、最も多い原因になっているのが人間関係です。特に多いのが、はじめて外国人労働者を受け入れる企業で頻発する問題です。日本人社員と外国人労働者の人間関係の不和です。
現場で外国人労働者に仕事を教えるのは日本人社員になります。日本に住んでいる多くの日本人社員は外国で働いた経験がありません。
外国語で支持を受ける立場になってみた経験がない中で、外国人労働者に支持をだすのは大きなストレスとなります。それが納期に追われた現場の責任をまかされていれば容易にストレスが想像できます。
そして指示を受ける側の外国人労働者側も納期に追われてピリピリしている現場の空気を察知します。現場の空気感を読む外国人労働者は、ピリピリしている日本人社員にストレスを与えないように気を遣う結果、人間関係の不和が起きます。
日本語で受けた指示を理解していないのに「わかりました」、仕事の手順を忘れてしまっても聞くのが怖いから自分の解釈で失敗を連発してしまうなど、日本人社員の責任者に気を使いすぎてしまう結果、現場の足を引っ張ってしまいます。現場の足を引っ張られる日本人社員はさらにストレスを抱え外国人労働者に対して冷たくなっていきます。
その結果、転職先を希望する相談になっていきます。問題の原因は、相互理解の不足とコミュニケーション不足があげられます。人間関係の不和の改善は問題も課題も明確ですが、解決策としてコミュニケーションをとることや相互理解を深める時間を労働時間とは別で確保する難しさがあります。
転職を希望する相談で次に多いのが、賃金に関する相談
勤続年数による昇給の希望、後輩が入ってきたことによる昇給の希望
相談内容は、先程の賃金の部分で紹介した内容が多いです。勤続年数による昇給の希望、後輩が入ってきたことによる昇給の希望などがあげられます。
悪質な場合では、賃金の未払いなども考えられますが、最近では行政の未払い賃金に関する対応が厳格化しているので、賃金の未払いに関する相談はあまり受けません。
労働環境の改善について、労働環境の改善を訴えてくる場合で多い事例が、仕事をはじめる前に現場の作業や仕事内容を聞いていた内容と実際に働いている仕事内容が違う事例がありました。
これは外国人労働者と受け入れる日本企業の間にはいる仲介会社の存在が問題の原因にあげられます。
・日本側の仲介会社が日本企業から仕事の内容の具体的な情報を収集せずに海外現地の人材紹介会社に人材募集の指示を出してしまう。
・指示を受けた海外現地の人材紹介会社(派遣機関や送出し機関など)が日本での本当の仕事の内容や情報を言わずに人材募集をしてしまう。
2通りの原因があげられます。
日本側が正確で詳細な情報を収集し海外現地に人材募集の指示を出しても海外現地側が日本側からの情報を隠したまま人材募集をしてしまう事例も多いので情報のチェック機能を持つことが外国人材の採用の成否を分けます。聞いていた仕事内容と実際の仕事内容が違うというミスマッチは防ぎようのある事故なのでつぶしこみをしっかりしたい部分です。
同居人とのトラブルについて、過去の弊社に寄せられた相談内容では同居人が異性を連れ込んでトラブルに発展する事例が多かったです。男性、女性、関係なく異性を住んでいる場所に勝手に室内にいれてしまい風紀が乱れることが原因として多いです。異性が室内に勝手にあがってしまうと夜中まで騒音がした、隣の部屋でパーティーをしていた、勝手に宿泊させたなどトラブルの種です。
同居している外国人労働者側からするとストレスがとても大きいです。
翌日も仕事をひかえた状態で騒音が深夜まで続いたりすると仕事にも支障が出てしまうので本当に困ってしまいます。
解決策としては寮の規則、ルールを定めて、定期的に寮の室内をチェックすることが大事です。もちろん雇用をする段階で寮の規則についても同意をつくり書面で残しておくことが後々のトラブルを防ぐことになります。
暴力行為については現場で秘密裏に起きているのがトラブル
暴力行為について、暴力行為については現場で秘密裏に起きているのがトラブルになります。先程の日本人社員との関係の不和でも紹介しましたが、現場の日本人社員が暴力行為をしている事例が過去にありました。この暴力行為には肉体的な暴力行為だけではなく精神的な、人間の尊厳を貶める言葉の暴力もあります。
日本語がわからないからといって罵詈雑言をあびせたり、外国人労働者の居ない場所で馬鹿にしていらりすると態度にでるので外国人材も馬鹿にされていることは察知します。逆にうまくいっている企業などを見ていると、日本人社員に対して教育をしています。外国人労働者は日本に働きに来てくれている、日本の会社を助けに来てくれていることを日本人社員に何度も言って理解してもらう事例がありました。
事業主や経営サイドの人間であれば当たり前の感覚であっても現場の若くて経験のすくない日本人社員が同じ感覚を持っているとは限りません。定期的に母国語で外国人材にヒアリングを重ねることが大切です。
住環境の改善について
住環境とは寝泊まりしている住居の改善を求める相談です。お風呂やトイレなどが故障してしまったのに、なかなか直してくれないといったことやエアコンが壊れてしまったのに修理してもらえない事例などがあります。
仕事に集中できる環境をととのえてあげれば外国人材も安心して仕事に取り組むことができます。トラブルになるケースでは外国人材の家電や住居の使い方が雑な場合に生じてしまった損害の補填を誰がするのかでもめるケースがあります。
先程の同居人のトラブルでも紹介したように寮の規則などをあらかじめ作っておけばトラブルを最小限に抑えることができます。責任の所在を明確にして損害が発生したときの弁済者も明確にしておくと良いでしょう。
以上が、母国語相談件数から見る実際に外国人労働者を採用した後に起きるトラブルと原因になります。
実際に起きてしまったトラブル事例を参考にして外国人材の採用を進めていけば、いくらでも対策は準備できるかと思います。まだまだ日本で働く外国人材は増加していきます。御社の外国人材採用の一助にしていただければ幸いです